« 花畑・菜園便り(5) | トップページ | 花畑・菜園便り(6) »

2017年7月25日 (火)

今野敏の新刊「継続捜査ゼミ」「回帰」 を読んで

 隠蔽捜査シリーズなどの警察小説で知られる今野敏の小説は以前から愛読しているが、最近2冊の新刊を読んだ。従来の今野敏の小説とだいぶ違った内容だったので、それの紹介をしたい。

 継続捜査ゼミ           2016年10月19日発行

 回帰-警視庁強行犯係・樋口顕   2017年 2月20日発行

(1)「継続捜査ゼミ」

Konno1_2 今野敏の警察小説は平成19年に読んだ「隠蔽捜査」以来ファンになり今回まで50冊近く読んでいる。「隠蔽捜査」シリーズは現在最終回の「隠蔽捜査6去就」までの8作品はすべて読んだ。

 今野敏の小説は捜査員の悩みや思考過程が文の中に多く出てくる内容の小説が多いが、それが深刻にならず、また平易な文章なので読み易いため、疲れた時や気分転換を図るときに読むことが多い。

  今回の「継続捜査ゼミ」は今までの今野敏の小説ジャンルにないもので、元警察学校の校長が退官した後、知人の伝で女子大の教授になり、継続捜査ゼミという迷宮入りした事件を考えるゼミを立ち上げ、個性豊かな女子大生5人のゼミの学生と15年前の未解決事件を思いがけない発想から解決していく話で、その間大学内で起きる事件も並行して発生し、それを解決していく話もあり、現在発生した事件を追いかける通常の警察小説とは異なる異色の作品である。

  課題が迷宮入りの事件の調査のため資料を調べるところから始まるので、息詰まるような緊迫した雰囲気はなく、素人に教えるような描写が多かったが、それはそれで警察小説の原点を復習している気分で読めた。

 事件が発生し、その解決に全力を挙げる警察小説も面白いが、この様な事件から離れた部分が多いストーリーを描く小説もまた楽しい。

(2)「回帰-警視庁強行犯係・樋口顕」

Img_4931 この小説は警視庁強行犯係に所属する樋口顕を主人公にした警察小説のシリーズで、1996年から2000年にかけて3作品が刊行され、最近になって2014年に「廉恥」という作品が14年ぶりに刊行されている。その後またしばらく途絶えて今年(2017年)2月に5作目の「回帰」が刊行されたのだが、刊行されるまでの期間が長いのでシリーズものとして読むよりも別な話として読んでも違和感は無い。

 今回は日本で発生したテロに対して公安と刑事部の軋轢がありながら次第に協力して第2のテロ防止に尽力して行く過程が読ませどころである。

 また従来の警察小説での公安部と刑事部が絡んだ事件では公安は情報を独り占めしたがるので、刑事部も独自のやり方で自分たちの事件に迫るという公安と刑事との対立をメインにしたものが多かったが、この小説は双方が情報を共有し、協力して事件を解決するストーリーになっているのが目新しい。

 ストーリーのなかにスリーパー.という言葉が出てくるが、これはスリーパーエージェントのことで「警察官、スパイ、特殊部隊員、ゲリラ、テロリストなどで、密かに活動したり、いざという時に奇襲攻撃を仕掛けるために、一般人や工作対象組織構成員などになりすます者」を意味するということである。このスリーパーが重要な役割を持ち、テロリスト側とそれを追い詰める側の両方にスリーパーの役割をする者が居て話を複雑にしている。

 海外のテロリストの侵入、ツイッターを悪用した犯罪計画、C4という新しい爆薬による爆破事件、SSBC(警視庁捜査支援分析センター)による解析など以前では考えられなかった新しい要因が駆使されたストーリーは、今後日本だけではなく通信や情報、人の交流などの国際化が進むなかで、犯罪小説もまた日本だけではなく国際的なつながりを持ったケースが更に増加していく前兆なのかもしれない。

(この項終わり)

 

« 花畑・菜園便り(5) | トップページ | 花畑・菜園便り(6) »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/2419082/71227596

この記事へのトラックバック一覧です: 今野敏の新刊「継続捜査ゼミ」「回帰」 を読んで:

« 花畑・菜園便り(5) | トップページ | 花畑・菜園便り(6) »